文章1(20点)
 ぼくの知り合いに、やたらと「元を取る」ことにこだわる人々がいる。各種の権利、サービスその他を、とにかく使い倒さないと気が済まない。
 食べ放題に行くと、ローストビーフばかり食えないほど取ってきて「これが一番割がいい」と悦に入る。あるいは出張で飛行機に乗るとき、たまにラウンジの使用権をもらうと、もうどうせすぐ搭乗開始でラウンジに行くだけでも面倒なのに、「使わないともったいない、元を取らないと」とダッシュでラウンジに向かい、シャンパンを四、五杯がぶ飲みして、またダッシュで搭乗ロに向かう。
 いやあ、そこまでしてシャンパンが飲みたいかねえ、とぼくは思うんだが、ずっと不思議に思いつつ、追求しないできたんだが…。
 海外出張の時、仲良くなって週に4日は一緒に飲みに出かけていた人がいたんだが、彼はどんなカラオケバーに行っても、ママさんと交渉して、飲み放題にさせる。そしてその交渉が成立すると、やたらにウォッカのトマトジュース割りとかを頼むのだった。
 しばらくそれが続いたので、「ずいぶんトマトジュースがおすきなんですねえ」というと、かれいわく「いやあ全然。どっちかと言えば嫌いだけど。でも、この国のトマトはすべて輸入なんで、原価がいちばん高いんだ。だからこれを飲むのがいちばん元を取れるんだよ!」。
 ぼくはそれを聞いて、絶句した。彼らの発想では、とにかく相手が最大限の損をすることが自分にとっての得にえるらしいのだ。
 こうした意識は貧しい陸封国や島国に多いようだ。そうしたところでは、これまでパイの大きさはほとんど変わらなかった。だから、自分の取り分を増やすには、他人の取り分を減らさなくてはならない。成長しないパイを前提にしたこのやり方丨丨は、人が足の引っ張り合いをしたがる原因で、パイが一向に成長しなくなる。
 ぼくはこの失われた20年ほどで、日本もまさにそれに近い状態になりつつあるのではと恐れている。

【答案】

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